[観客]「2022年夏には敷地内の電柱に落雷。野外公演の開催に、“雷はしょうがない”では済まないと思いました」





「数年前から急激な天候の変化にビクビクしていました。2022年夏には敷地内の電柱に落雷。野外公演の開催に、“雷はしょうがない”では済まないと思いました。」

萌木の村株式会社 様

毎年7月下旬~8月上旬に清里高原「萌木の村」で開催される「清里フィールドバレエ」は、日本唯一の長期野外バレエ公演である。今年で36回目を迎え、観客数は第1回公演(1990年)の350名から、今では13公演で1万人を集める世界的な公演に成長した。

舞台は木々と夏の星空を背景に、月明りや霧、時には夕立が幻想的な空間を演出するが、その一方、自然の驚異である雷とも、切っても切れない関係にある。八ヶ岳連峰の南麓に広がる清里の標高は1,200m以上。変わりやすい山の天気。夏の落雷が頻繁だ。

イベントを取り仕切る萌木の村(株)執行役員の舩木俊さまにお話を伺いました。

【導入製品:PDCE-Magnum(3基)】

清里フィールドバレエ

[萌木の村株式会社]

原点は、現社長の舩木上次氏が「若者たちが集い、夢を語れる場を」との思いで1971年に開業したレストラン「ROCK」。清里開拓の父といわれるポール=ラッシュ博士の薫陶を受けた舩木氏らは、半世紀を掛けて約1万坪の敷地を整備。

石垣は手積みし、八ヶ岳の在来種を含む700種超の植物を植栽した花壇「ナチュラルガーデンズMOEGI」は、今年、環境省が定める生物多様性保全区域「自然共生サイト」に認定されている。敷地内のホテル、オルゴール博物館、清里フィールドバレエ、クラフトビール醸造所、ナチュラルガーデンなどを運営。萌木の村の訪問者は年間約50万人に上る。

HP: https://www.moeginomura.co.jp/

ナチュラルガーデンズMOEGI
萌木の村株式会社|本社外観

本社外観

観客も踊り手も物語の世界に入り込む、夏の八ヶ岳南麓野外劇場

まさに一期一会のバレエ公演

月は昇り、星が輝く。風が踊り手の衣装を揺らせば、舞台に昆虫が止まったり。気温、湿度は刻々と変化し、霧が舞台を包み込むことも。バレエシャンブルウエストの踊り手が「物語の世界に没入できる」と評する萌木の村特設会場の13日に渡る公演で、同じ時は1度としてありません。

昨年の2日目公演では雷雨で中断しましたが、雨雲が去った後の虹、夕焼けは格別で、再開後は星が流れ込むかのような幻想的な舞台となりました。

夏の八ヶ岳南麓野外劇場

天候に左右される野外バレエの難しさ

自然と共鳴する唯一無二の舞台を皆さまに提供して36年になりますが、天候による影響をどう低減するか、その奮闘の歴史でもあります。弊社社長の舩木は、何もない広場に舞台を造った当時に野外公演の大変さを知っていたら始めていたか分からない、と振り返っています。そして、「我々は若かったから、怖いもの知らずで挑戦できた」とも。 天候への対応は、具体的には、夜露でリノリウム板の舞台が滑りやすくなるため、舞台スタッフが雨露を拭き上げたり、会場スタッフが総出で客席を雑巾で拭いたり。リアルタイムのお天気情報は、公式instagramのストーリーにて情報発信をしています。また天気によりプログラムを中止した場合、チケット代金は払戻をしています。

野外ライトアップ
雫|花
萌木の村株式会社|舞台
野外劇場|清掃
野外劇場|清掃02
清里フィールドバレエ|会場
てるてるリーナ

清里フィールドバレエ期間中、
萌え木の村に現れる「てるてるリーナ」

入道雲が立つ夏の清
里

入道雲が立つ夏の清里

全国からフィールドバレエファンが足を運ぶ

全国からフィールドバレエファンが足を運ぶ

フィールドバレエ|レジャーシート鑑賞可能

劇場とは異なり、レジャーシートを敷いて鑑賞できたりと、親子連れでも楽しめる

夕立後の景色

夕立で中断しても、舞台の余韻が残る景色

野外劇場|バレエ|全体

樹木に囲まれた1万坪。過去には落雷被害も

休演日のステージに落雷

 13、4年前になりますでしょうか。バレエ会場の鉄塔に落雷し、音響と照明が被害に遭い影響が出ました。休演日でお客さまやスタッフへの被害がなかったのが何よりでした。

次年度の運営に支障がなかったので、そのままになりましたが、当時は、雷は“しょうがない”自然現象で、何か対策できるとは思っていませんでした。

2022年夏、敷地内ホテルの電柱に落雷

 それから10年間は無事でしたが、2022年7月27日のお昼ごろ、ホテルの電柱に落雷しました。この影響で全ての電気系統が損傷し、冷蔵庫やエアコン、井戸水を汲み上げるポンプやボイラーが使えなくなりました。買い替え、修繕などに時間がかかり、2日間に渡ってライフラインが停止しました。

休業を余儀なくされ、夏休みに足を運んでくださったお客さま方にご迷惑をお掛けしました。ホテルにご予約のお客さまは、近隣の宿泊施設のご協力を得て、清泉寮やオールドエイジにお泊りいただきました。

1発の落雷で500万円以上の被害。

具体的な被害では、レストラン地下のビール工場で仕込んでいた分と、レストランの材料も破棄せざるを得ませんでした。これらを併せて100万円以上。営業停止による被害が約500万円以上になりました。

営業補填の保険を掛けていましたのでそれらは賄えましたが、当然翌年から保険料は上がりました。

自然と共存し続けるために、新しい手段を取り入れる

まずは、清里夏の風物詩、野外バレエの落雷対策

自然の演出は、いつもリスクと表裏一帯です。この何年かは、開催期間中に天候が急変することが増え、正直なところビクビクしていました。ステージの向こうに稲光が見えたり、突然雷鳴が轟いたりすることもあります。ホテル近くの電柱に落雷した際は幸いにも人的被害がありませんでしたが、自然と共存するフィールドバレエを守り続けるには、天気と戦う必要がありました。

雷から避難できる場所が必要

ひと夏13公演で、1公演あたりの観客は1,000名前後です。出演者、スタッフ併せ、1,200名近くが会場となる萌木の村広場に集まります。しかし、雷が発生しても、安全な退避場所はレストランROCKの建物とお客さま方の車だけ。場合によっては避難が間に合わないことも考えられます。また、高さ12mのタワーの上で仕事をする照明係らの安全を考慮しても、雷対策は先延ばしにしていいことではありませんでした。

弊社代表の舩木が、こと落雷については、今は最新で最善の策と思われるPDCE避雷球を知り、イベントでの設置実績が豊富なエイトエージェンシー様に連絡を取ったのです。

現場の大工さんらから「おまじないじゃないの?」の声も

2024年の舞台では、照明タワーとステージに計3基のPDCE避雷球を設置することになり、取付は舞台設営に永らく関わってくださっている地元の業者さんにお願いしました。
私を含め、避雷球を初めて見る方ばかりで、「重い」「おまじないじゃないのか」「寄せ付けない雷はどこに落ちる?」などの疑念が出ました。

照明タワーとステージに計3基のPDCE避雷球を設置

しかし、エイトエージェンシー様の提案資料に、樹木や鉄塔など尖っている所から放電し雷電流を呼び込むこと、呼び込んだ雷電流は濡れた地面に広がり危険なこと、その上で避雷球の寄せ付け難い仕組みについて解説されており、皆さんに納得して取り付けて頂くことができました。

避雷球の寄せ付け難い仕組み|会場
会場|避雷針01
会場|避雷針02

今後は、「対策ガイド」の配布も

2024年、2025年とPDCE避雷球による落雷対策をして公演を行いましたが、今後は、雷雲の近接など天候が急変した際にお客さまに取っていただきたい行動について、リーフレットを配布することも検討しています。

自然と調和した清里フィールドバレエを続けて来られたことは、我々の誇りです。関わる方皆様の宝物になるよう、これからも挑戦します。

自然と調和した清里フィールドバレエ

私はこの自然の中で上演する清里フィールドバレエは、清里の財産だと思っています。その価値は我々の誇りです。関わる人全ての方の宝物になるよう挑戦します。

萌木の村株式会社執行役員の舩木俊さま、
(右)株式会社エイトエージェンシーの八里様、(左)弊社代表の松本敏男

10代のころは、フィールドバレエの舞台にも立っていた、
萌木の村株式会社執行役員の舩木俊さまを囲んで。
(右)株式会社エイトエージェンシーの八里様、(左)弊社代表の松本敏男。
ちなみに、レストランROCKの地ビール「TOUCHDOWN」は、
数々の国際ビール審査会で最高賞を獲得してきた厚みのある味わいです!

(写真ご提供:萌木の村様/取材日:2025.09.24)

萌木の村株式会社|「清里フィールドバレエ」