落雷や異常電圧は、企業の電気設備や大切なデータに大きな被害をもたらします。そこで注目されるのが「SPD(サージ防護デバイス)」です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は私たちの身近な電子機器を守る重要な役割を担っています。本記事では、「SPDとは?」という基本から、避雷器や避雷針との違い、種類や選び方、そしてメンテナンスのポイントまで、わかりやすく整理してご紹介します。
SPDとは何か?
SPD(Surge Protective Device:サージ防護デバイス)は、雷や電力系統の異常によって発生するサージ電流(過大な電流)を逃がす装置です。
- 雷サージ=付近に落ちた雷の電流が、電線などから流れ込む現象
- SPD=サージをバイパスさせて電子機器を守る装置
たとえば落雷によって配電線に数千アンペアもの電流が流れた場合、そのままではオフィスのパソコンやサーバーが一瞬で故障したり、最悪の場合は火災を引き起こす場合もあります。SPDはその電流をアースに流し地面へと逃がすことで、機器へのダメージを防ぎます。
言い換えれば、「建物の内部で起きる雷害に対する最後の砦」です。
避雷器や避雷針との違い
雷対策といえばまず思い浮かぶのが「避雷針」や「避雷器」ですが、SPDとは役割が異なります。
- 避雷針:建物の屋根などに設置し、雷を「誘導して地中へ逃がす」設備
- 避雷器:送電線や変電所などに設置される、大規模な電力設備を保護する装置
- SPD:建物内部の配線や電子機器を保護するための装置
つまり、避雷針が「外部対策」、SPDが「内部対策」を担っていると言えます。
両方を組み合わせることで、建物そのものと内部設備の双方を守れるのです。
SPDの種類と設置例
SPDにはいくつかの種類があり、守りたい対象や設置場所によって使い分けます。
1. コンセント差し込み型
- パソコンやテレビなどに直接取り付けるタイプで、電源タップ型やコンセント直付け型がある
- 手軽に導入できるが、カバーできる範囲は限定的

2. 配電盤設置型
- 建物全体を保護するタイプ
- オフィスや工場など、規模の大きい施設で用いられる(設置は電気工事士に依頼)。

3. 配信線用SPD
- LANケーブルや電話線に侵入するサージを防ぐもので、コネクタを差し込むだけで設置できる小型のものや、ケーブル辞退にSPDが組み込まれている直付け型、大量のサーバーや通信機器を一気に保護できるパネル型など
- サーバーや通信機器の保護に必須

4. 産業用大規模タイプ
- 発電所やプラント、データセンターなどに設置
- 大電流に耐えられる容量と高い耐久性があり、事業継続の要となる
たとえばオフィスであれば、分電盤に設置して建物全体を守りつつ、サーバールームやネットワーク機器には通信線用SPDを追加設置する、といった多層的な対策が効果的です。

SPD導入のメリット
- ・機器の故障やデータ消失リスクを減らせる
- ・修理・交換にかかるコストを削減できる
- ・停電による業務停止を防ぎ、事業継続性(BCP)を確保できる
企業にとっては、「雷害によるリスクをどれだけ減らせるか」=「損失を防げるか」という経営的視点が重要です。
注意点とメンテナンス
SPDは万能ではありません。大きな雷電流を受け止めた場合、SPD自体が破損することもあります。そのため、以下の点に注意が必要です。
- ・定期点検:SPDの寿命や動作状態をチェック
- ・交換のタイミング:大きな雷を受けた後は内部が劣化している可能性あり
- ・併用対策:避雷針や接地工事と組み合わせることで効果が高まる
「設置したら終わり」ではなく、「運用と保守」まで含めて考えることが重要です。
まとめ
- ・SPDとは? サージを逃がして電子機器を守る装置
- ・避雷針や避雷器との違い:外部を守るか、内部を守るかの役割分担
- ・種類と用途:コンセント型から産業用まで多様
- ・重要性:内部雷対策の要として、企業の事業継続に直結
落雷や異常電圧は避けられませんが、被害を最小限に抑えることは可能です。
外部対策と内部対策の両立、そして定期的なメンテナンスを行うことで、企業の大切な資産を守り抜くことができます。