雷は夏の夕立や台風シーズンに身近に感じる自然現象ですが、実際に「雷は何ボルトあるのか
?」と聞かれると答えられる人は少ないのではないでしょうか。
◇ 電圧 = 電気を流そうとする「圧力」
◇ 電流 = 実際に流れる電気の「量」
雷のもつ電圧や電流は、私たちが普段使う電気とは桁違いの規模です。本記事では、雷の数値
を具体的に示しながら、その仕組みや被害、そして企業や施設が取り組むべき落雷対策につい
て、専門知識がなくても理解できるよう分かりやすく解説します。
雷は何ボルト?桁違いの電圧と電流
結論から言うと、雷の電圧は 数千万〜数億ボルト(V) に達し、電流は 数万アンペア(A) に
もなるといわれています。
私たちが普段使う電気と比較すると、その規模がいかに大きいかがよく分かります。
- ・家庭用コンセント:100V程度
- ・乾電池:1.5V
- ・雷:数億V、数万A
ノートパソコンの使用電流は1A程度、電子レンジは15A程度で、家庭のブレーカーは30A程度で作動しますが、雷はその数千倍もの電流を一瞬で流すのです。さらに昨今は、数十万アンペアを超える落雷も1%程度発生しています。
なぜ雷はこれほど高電圧・大電流なのか
雷は雲の中で起こる「電荷の分離」から始まります。
- ・積乱雲の中では、氷や水滴が激しくぶつかり合い、プラスとマイナスの電荷が分かれる。
- ・雲の下部にはマイナス電荷がたまり、地面にはプラス電荷が誘導される。
- ・このとき、雲と地上の間には 数億ボルトに及ぶ電位差 が生まれる。
- ・その差が限界に達すると、一気に放電が起きて「雷」となる。
イメージしやすい例えとして「水道」を考えてみましょう。
- ・電圧=水圧(どれくらい強く押し出すか)
- ・電流=水量(どれくらいの量が流れるか)
- 雷は、水圧も水量も極端に大きい状態で、一気に放出される現象だと考えると理解しやすいでしょう。
雷のエネルギーがもたらす被害
これほど大きな電圧・電流を持つ雷が落ちれば、私たちの生活や事業に深刻な影響を与えます。
1. インフラへの影響
- ・停電や電車の運行停止
- ・通信障害やインターネット回線のダウン
- ・工場ラインの停止

2. 建物・機器への被害
- ・サーバーや制御装置など精密機器の破損
- ・電気回路の焼損や火災発生
- ・データ消失やシステム障害

3. 人的被害
- ・日本国内でも毎年数人が落雷事故で亡くなっている
- ・屋外スポーツや登山などでの被害例も多数報告されている

4. 文化遺産の損失
- ・避雷針に落雷し、強力な雷電流で火災報知器が燃えだした事例も
- ・東寺(京都)の五重の塔は過去4度、落雷により焼失している(現在のものは、寛永1644年に再建されたもの)

雷は単なる自然現象ではなく、人命や事業継続、社会的価値の損失に直結するリスクといえます。
経営者・施設責任者が押さえるべき落雷対策
企業や施設の管理者にとって、雷対策は「コスト」ではなく「投資」です。適切な対策を取ることで、大規模な損害や事業停止を未然に防ぐことができます。
代表的な落雷対策
1. 避雷針
- 「雷を呼び込む仕組み」により、雷を地面に逃がす。
- 必ずしも避雷針に落ちるとは限らず、ビルの角などを雷が直撃することも。
2. 避雷球(PDCEなど)
- 「雷を呼び込まない」という発想で開発された装置。
- 落雷を抑制し、施設全体を保護する役割を持つ。
- スタジアム、リゾート施設、発電所、神社などでも導入実績あり。
3. SPD(サージ防護デバイス)
- 雷によって発生する異常な高電圧(雷サージ)を遮断し、機器を守る。
- 特にサーバーや制御装置など、電子機器の保護に有効。
防御の考え方
これらの対策は「どれか一つ」で完結するものではありません。
- ・避雷針で直撃を逃がす
- ・避雷球で落雷自体を抑制する
- ・SPDで機器を守る
こうした多層的な防御を行うことで、はじめて十分な安全が確保されます。
まとめ|雷の数値を知り、正しく備える
- ・雷は 数億ボルト・数万アンペア の規模を持つ自然現象。
- ・そのエネルギーは停電・通信障害・設備破損・人命被害など、多方面に深刻な影響を与える。
- ・経営者や管理者にとって、落雷対策は事業継続を守るための「リスクヘッジ」。
自然の力を完全に制御することはできませんが、最新の対策設備に投資し備えることで、被害を大幅に抑えることは可能です。
雷の恐ろしさを「数値」で理解することは、備えの第一歩です。企業として、施設管理者として、そして一人ひとりの安全のために、今できることから始めましょう。
