雷 電圧とは? 1億ボルトに達する仕組みと安全対策を解説

雷は、私たちの生活やビジネスに身近な自然現象です。
稲光とともに響く轟音は圧倒的な迫力がありますが、実際にどのくらい強力なのか、数値で理
解するとその脅威の大きさが実感できます。
一般家庭で使うコンセントが 100V(ボルト) なのに対し、雷はなんと 1億Vに達する電圧を持
ちます。まさに桁違いのエネルギーです。この記事では雷の電圧の実態や発生の仕組み、そし
て企業や施設がとるべき具体的な安全対策について紹介します。

雷の電圧と電流の実態

  • ・家庭用コンセント:100V
  • ・送電線(高圧電力):数万V
  • ・落雷:1億V

さらに電流は 数万A(アンペア) にも達し、一瞬で膨大なエネルギーを放出します。ノートパ
ソコンの資料電流は1A程度、電子レンジで15A程度ですので、雷電流はその数万倍に相当しま
す。このため、落雷によって設備が焼損したり、火災が発生したりするのです。
[電圧]電気が流れる勢い / [電流]流れる電気の量

なぜ雷が起こるのか

雷は「放電現象」の一つです。

  1. 積乱雲の内部で氷の粒や水滴がぶつかり合い、電荷が分離する
  2. 雲の下部にマイナス電荷、上部にプラス電荷が集まる
  3. 雷雲の発生により、直下の大地がプラスに帯電
  4. 雲と地上の間に巨大な電位差が生まれる
  5. 電位差が限界に達すると、空気の絶縁が破れ、一気に放電が発生

これが「雷放電」であり、1億V規模の電圧が一瞬にして流れます。

企業や施設におけるリスク

雷の電圧・電流は直撃だけでなく、配線や金属を通じて建物内部に侵入することがあります。

  • ・停電・システム障害
  • ・工場ラインの停止
  • ・通信設備のダウン
  • ・火災リスク
  • ・機器の故障によるデータ消失

設備損傷による修理費・交換費以上に圧し掛かるのが、操業停止による機会損失です。こうし
た被害は、工場やオフィスにとって事業継続(BCP)そのものに関わる重大なリスクです。

安全対策:基本と最新の取り組み

避雷針

雷を建物に誘導し、アースで安全に地面に逃がす仕組み。古くから使われていますが、「雷を
呼び込む」特性があるため、周辺環境次第でリスクも残ります。

SPD(サージ防護デバイス)

電源ラインや通信ラインを通じて侵入する異常電圧(サージ)を逃がす装置。精密機器やサー
バーを守るために必須です。

SPD(サージ防護デバイス)

UPS(無停電電源装置)

停電などにより電源供給がストップした場合でも、予備電力として機能してくれる装置です
。UPS内の切替装置により安全にシャットダウンすることでデータの損失を防ぐことができ、
作業内容を保存するための時間も確保できます。

UPS(無停電電源装置)

非常用発電機

UPSは停電時に瞬時に蓄電池へ切り替わりますが、UPSの給電容量には限りがあります。その
ため、UPSの給電が機能している間に非常用発電機へ切り替えるという段階的な対応が有効で
す。

落雷抑制システム(PDCE避雷球)

従来の避雷針とは異なり「雷を呼び込まない」発想で開発された新しい設備。

  • ・自衛隊施設
  • ・化学コンビナート
  • ・データセンター
  • ・神社や文化財など全国で導入が進んでいます。

事例紹介

水力発電所(神岡鉱業株式会社)

岐阜県の山岳地帯にある送電鉄塔では、かつて直撃雷で設備が焼損し、復旧に3週間を要したこ
とがありました。
そこで「落雷抑制システム(PDCE避雷球)」を25基導入。以降は被害ゼロを実現し、エネル
ギーの安定供給に貢献しています。

武蔵御嶽神社(東京都青梅市)

標高の高い御岳山の山頂に鎮座する神社は、雷雲の通り道で毎年落雷被害に悩まされていまし
た。
国宝を含む文化財を守るため、補助金を活用してPDCEを導入。従来4本あった避雷針を撤去し
、1基の抑制システムに切り替えることで直撃リスクを低減しました。

レジャー施設(相模湖リゾート)

標高370mの山頂にあるアスレチック施設「マッスルモンスター」は、屋外で金属ハーネスを装
着して楽しむアトラクション。
従来の避雷針ではお客さまに危険が及ぶ可能性があり、PDCE避雷球を導入。気象予測サービ
スを組み合わせることで、来場者の安全を守る体制を築いています。

まとめ

  • ・雷の電圧は1億ボルト、電流は数万アンペアに達する。
  • ・発生の仕組みは、雲と地上の電位差による放電現象。
  • ・企業や施設にとっては停電や火災、事業停止など重大リスクをもたらす。
  • ・避雷針やSPDに加え、最新の落雷抑制システムを導入することで被害を低減できる。
  • ・経営層にとって雷対策は「安全投資」であり、事業継続のための不可欠な備え。

雷は避けられない自然現象ですが、適切な対策で被害を最小限に抑えることは可能です。経営
者や管理職にとって、雷電圧の脅威を理解し、今こそ備えを見直すことが求められています。

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