
突然発生する落雷停電。
企業にとっては、業務の中断や設備の損傷、さらには顧客へのサービス提供に大きな影響を与える深刻な問題です。自然災害である雷を完全に防ぐことはできませんが、停電の原因や復旧方法を理解し、適切な備えをしておくことで被害を最小限に抑えることができます。本記事では「落雷停電」というテーマで、その仕組みと復旧手順、さらに企業が取るべき安全対策について解説します。
落雷による停電の仕組み
送電線や配電設備への直撃雷
雷が送電線や変電設備に直撃すると、広範囲にわたる停電が発生します。特に高所に設置されている鉄塔や送電線は雷を受けやすく、その影響が都市部全体に及ぶこともあります。
誘導雷やサージによる障害
雷が直接建物に落ちなくても、近くに落雷することで強い電磁波が発生します。これにより電線を通じて「誘導雷(雷サージ)」が侵入し、パソコンやサーバー、工場の制御盤などの電子機器を故障させることがあります。落雷による停電は「電気が止まる」だけでなく、「設備が壊れる」二重のリスクをもたらすのです。
停電時の対応・復旧の流れ
1. まずはブレーカーの確認
停電が発生した場合、建物全体か一部かを確認します。一部だけならブレーカーが落ちている可能性があります。安全を確かめた上で配電盤を確認し、復旧可能か判断します。
2. 電力会社へ連絡
広範囲の停電や自力で復旧できない場合は、速やかに電力会社へ問い合わせます。近隣地域の停電情報を確認することで、自社の停電が個別の問題か広域的なものかを切り分けることができます。
3. 復旧を待つ間の行動
重要な設備を維持するためには、あらかじめ非常用電源を確保しておくことが欠かせません。例えば、UPS(無停電電源装置)は短時間ながらサーバーやPCを安全にシャットダウンさせるのに有効です。また、非常用発電機を備えておけば、長時間の停電でも一定の業務継続が可能になります。
- ・UPS:予備電力として機能してくれる装置で、パソコンやサーバーなどの電子機器と電源の間に組み込んで使用。安全にシャットダウンすることでデータの損失を防げるとともに、作業内容を保存するための時間も確保できる
- ・非常用発電機:UPSより長時間にわたる停電に対応。ディーゼル・エンジンを採用しているものや、LPガスを燃料とするものがある
企業に必要な予防策
外部対策:直撃雷を防ぐ
もっとも基本的な方法は避雷針ですが、従来の避雷針は「雷を集めて地面に流す仕組み」であり、近接する人や設備に影響が及ぶ可能性があります。近年は「落雷を呼び込まない仕組み」を持つ落雷抑制装置(PDCE)が登場しており、サッカー場やリゾート施設などでも導入が進んでいます。 PDCE避雷球 の製造元の当社にも多くのご相談をいただいております。
内部対策:電子機器を守る
落雷時の被害は停電だけでなく、サージによる電子機器の故障も大きな問題です。このリスクを抑えるには、SPD(サージ防護デバイス)の設置が有効です。SPDは過剰な電流を逃がし、サーバーや制御装置を守ります。また、UPSを組み合わせることで、電源断によるデータ消失や作業中断を最小限にできます。併せて非常用電源も備えて、UPSが機能している間に非常用電源に切り替えられれば、停電のない安全な環境を継続できます。
ただし、UPSが落雷を受けた場合には、UPS自体が損傷し、突然の停電となってしまいます。
情報対策:事前に備える
近年は気象予測サービスが高度化しており、雷雲の接近を早い段階で察知することが可能です。例えば「雷警報が出たら機器の電源を落とす」「作業員を安全な建屋に退避させる」といったマニュアルを整備し、従業員へ周知しておくことが重要です。特に工場や屋外施設を持つ企業にとって、気象情報の活用は実効性のある防災対策になります。
落雷停電とBCP(事業継続計画)
企業経営において、落雷停電は単なる自然災害ではなく「事業を止めるリスク」と捉えるべきです。
- ・製造ラインが止まれば納期遅延
- ・サーバーダウンで顧客サービスが停止
- ・長時間停電で在庫の温度管理ができず品質劣化
- ・医療機関では人命に関わることも
こうした事態は顧客信頼の低下や経済的損失に直結します。したがって、BCPの一環として「停電への備え」を明文化し、訓練や設備投資を計画的に行うことが求められます。
まとめ
落雷停電は予測できない自然現象ですが、その影響は企業活動に甚大な被害をもたらします。
- ・原因を理解すること:直撃雷や誘導雷によって停電が発生する
- ・復旧手順を知ること:ブレーカー確認、電力会社への連絡、非常用電源の活用
- ・予防策を講じること:避雷針や落雷抑制装置、SPDやUPSの導入、気象情報の活用
これらを組み合わせることで被害を最小化し、事業継続を守ることができます。
経営者や管理職の皆さまにとって、落雷停電への備えは「万が一に備える保険」ではなく「事業継続のための必須投資」です。自然災害に強い企業体制を整えることで、社員と顧客の安全を守り、信頼される企業経営を実現していきましょう。
