「震災がなかったら巡り合わなかったこの土地。
自分が建てるものには設備1つ1つに納得したかった。」
賃貸併用住宅 アン・ソレイユ オーナー Y 様
2011年3月11日の東日本大震災を、単身赴任中に福島で遭遇したY様。2017年、東京都江戸川区に賃貸併用住宅を構えて以降も、週の大半を福島で廃炉作業にあたられている。
住宅建設に際し、丸投げできる大手ハウスメーカーとは金額的に折り合わず、ご自身で建設コスト削減や業者選定に係わることになるが、設備仕様を吟味する中で「PDCE避雷球」にたどり着き、当初計画に盛り込まれた。
「震災で人生が別の方向に転がった」というY様の建物へのこだわり、PDCE避雷球についてのご意見を伺いました。
【導入製品:PDCE-junior(1基)】

[アン・ソレイユ]
JR総武線 新小岩駅から続くルミエール商店街の中ほどからすぐの場所にある地上7階 鉄骨造の賃貸併用住宅。賃貸部屋は全8室で1LDKが中心。防犯性を考慮した埋込式郵便ポストや防犯カメラ、AEDなどを備え、共用部分はY氏の奥様が美化に努められており、安全・快適な住空間を提供している。また屋上からは、スカイツリー(写真左)や東京タワー、冬の晴れた日には富士山も望むことができる。
(アン・ソレイユ=陽だまりの場所)
賃貸併用住宅の建設に、分離発注を選択
震災から5年。実家近くに自宅を計画
福島でもう20年以上働いています。地震の2日後に家族を妻の実家に送り届け、以降は単身赴任です。週末は東京に戻っていますが、いつまでもマスオさん状態はいかがなものかと、震災から5年経ったころ、実家から”スープの冷めない距離”で土地を探しました。
駅近、5階建が可能な土地と巡り合い
まさにそんな場所、アーケードが続く商店街からほど近くに40坪の土地が売りに出されました。建ぺい率80%、容積率400%というのです。瞬時に「5階建てができる」と思いました。 戸建住居のイメージしか持っていませんでしたが、その土地と出会ったことで、一気に収益物件建設へと頭が切り替わりました。


JR 新小岩駅南口から全長 420m に渡 って続くルミエール商店街(写真左)は、昔ながらの店舗と全国チェーン店が混在し、活気に溢れている。現在、駅南口では再開発が進む(写真下)

大手ハウスメーカーとは資金面で折り合わず
大手ハウスメーカーをあたったところ、各社とも、建物価格は私が用意できる資金の 2 割超上回り、取引に至りませんでした。費用を抑えるには設備の施主支給や分離発注も検討しようと考えました。
設計をコンペにかけて
大手ハウスメーカーの中には、付近の賃貸相場や収益物件経営のノウハウなど、多く情報を提供してくれる気前の良い会社もありました。
建築プランと見積を、設計コンペサイトで公募しました。50 社近くから提案があり、数社からプレゼンテーションを受け、1 社に決定しました。
雷サージが建物を通過していいはずがない
個々の設備ごとに見積を吟味
エレベーターや増圧ポンプ、連結送水管など、設備 ごとに設計、機器選定、資材調達まで見積を吟味しました。例えば住宅設備では、増圧ポンプはこの機種でいいのか、連立送水管の配管の引き回しはもっとシンプルに設計できるのではないか、などです。
屋上の避雷針もその 1 つでした。7階建てで、高さ 20m 以上のため避雷設備の設置が建築基準法で義務付けられています。しかし、避雷針を立てて、引下げ導線を這わせて地中にアースするという。いまどき他に方法はないのか? 銅線も価格が高騰しているし、コストダウンのために、ネットで調べてみました。
雷サージが悪さをすることは体験していた
すると、雷サージを寄せ付けないという PDCE という避雷針が出てくるではありありませんか。「これはおもしろい!」と思いました。お迎え放電を出さないから、雷が引き込まれない。だから雷サージに困らない。いいアイデアです!
何万ボルトもの雷サージが建物を通過していいはずがありません。職場でもタンクに落雷したり、計装品が壊れたりということを経験していますし、自宅のテレビが壊れたこともあります。YouTube にも雷サージの危険な映像はごまんと溢れています。
これまでの避雷針との比較データに納得
落雷抑制システムズのホームページに掲載されているさまざまな資料に目を通しました。牛久大仏の頭上の設置例は説得力がありますし、これまでの避雷針と PDCE を並べて試験機関で実験したデータや、フィールド試験の結果に「そうだろうな」と納得しました。

フランスの Pau 大学での放電試験(フランス規格NF-C17 に準ずる)では、突針型避雷針(左側)と同じ電圧を印加しても PDCE(右側) には 放電しないことが確認されている

青森の深浦町で 5 年間に渡り行われた比較実験。高さ92m の鉄塔に突針型避雷針と PDCE 避雷球を同じ高さに設置し、サージカウンタ ーで計測。11 対 0 で、PDCE避雷球には落雷せず
いよいよPDCE避雷球の設置へ
不動産運用の専門家であるPDCE工事店につながる
落雷抑制システムズに連絡すると、新築物件ならばと、電気・通信工事はもとより消防設備工事にも明るい綜合電設の宮下様を紹介されました。宮下様は元不動産投資ファンドのアセットマネージャーで中小企業診断士。賃貸不動産経営の経験ゼロの私に、心強い相談相手になってくれました。そんなわけで、工務店に電気工事を含め一括発注するつもりでしたが、電気・通信工事は宮下さんに分離発注しました。
新築のため構造体接地を採用
コストダウンを探って辿り着いた PDCE でしたが、受雷部としての価格は「針」の何倍もします。しかし、原理から納得できましたので、価格度外視で PDCE を選びました。あの丸いフ ォルムも気に入りましたし。
避雷設備を後付けする場合は外部に引下げ導線が必要となりますが、設計段階から盛り込んだため、構造体接地を採用できました。鉄骨建方段階で基礎鉄筋と鉄骨柱を、また屋上では避雷導線や端子を鉄骨に接続し、その後屋上のコンクリートを打設しました。
構造体接地は、法規、施工管理、技能など多面的な経験が求められますが、外部に引下げ導線を設置する材料費、施工費が不要となり、宮下様のお陰で美しい工事をしていただけました。

PDCE は電気を使う機器ではなく、周囲のアンテナに電磁的な干渉を及ぼすことがないため同軸に設置。テレビ局のアンテナやアマチュア無線のアンテナにも PDCE は取り入れられている。



(左上)建物東側から/(右上)建物西側から。
建築に着工すると、電気工事を依頼する前の基礎工事で地下水があふれ出し、止水処理に想定外の出費を余儀なくされるなど想定外のトラブルが発生したが、ハウスメーカーに丸投げするよりコストを圧縮できた。竣工から8年、継続してマンションの価値向上を図るアン・ソレイユの、周辺物件に対する競争力は上がる一方だ。
設置から8年、落雷被害0!
竣工後も物件の価値向上を図る
賃料収入が入ることから法人登記をしましたし、管理者には消防設備の点検が義務づけられているため、消防設備士(乙種)の資格を取りました。外部委託するよりも、コスト削減と自分の知識向上につながりました。
東京都の助成金は常にチェックしています。電気自動車用の充電設備や、エントランスホールにサーマルカメラも設置しました。次は屋上に太陽光パネルを敷設したいですね。
次期PDCE避雷球に期待
竣工の翌年には PDCE に雷サージがどれだけ侵入したかをカウントする装置を付けました。これまで落雷被害はゼロです。PDCE は製品の 10 年保証をしていますが、
早いもので設置から 8 年経ちました。また、進化した PDCE をぜひ紹介してもらいたいですね。

共同住宅を建てる方々へのアドバイス
避雷針は尖がったもの、という固定概念に縛られていると、PDCE に辿り着けないと思います。目的を果たすための原理から考えようとすれば、他にある選択肢が見えてくるのではないでしょうか。一生に一度の自宅新築工事で、せっかくなら納得いくものを取り入れようと調べ始めたことで、私自身の知見が広がりました。
人生の後半でこんなに好奇心が騒ぐ案件に巡り合えましたが、すべてのきっかけは震災です。震災で私の人生は変わりました。


沖縄三大名花の1つで、花火のような形で夏にパッと咲くそうです
(取材日:2025.10.24)
設置工事にあたった(有)綜合電設 代表取締役 宮下様より
「2000 年代半ば、不動産投資ファンドのアセットマネジメントを担当していました。不動産投資では、リスクとリターンについても投資家利益の最大化という観点から解釈します。そのため、PDCE のような防災設備の導入についても、投資期間中の短期的なリスクヘッジ手段として損害保険との比較になり、導入を見送ったこともありました。
その後クラウド(IT)ベンダーに転じ、お預かりする情報資産の管理に責任を持つ立場となりました。当時はクラウドサービスの黎明期。契約でデータ消失免責をうたうことも可能ですが、信頼を得るためにはデータ消失は絶対に許されません。そのため、絶え間なく更新されるデータを常時複数拠点で保有する「冗長化」に多額の投資をおこなっていました。
そして今、電気工事業者という立場から見ると、違った景色が広がります。個人としての大事な思い出や自社が所有する重要情報は、損得関係なく絶対に消失できません。落雷の大電流がデータ消失を招くことが明らかで、これを回避する対策があるのならば、これを採用しない手はない、と確信しています」
綜合電設ホームページ https://sogodensetu.co.jp/
